[殿と樣] 今日では官名、公名には殿を用ゐ、私名には樣を用ゐることになっている。此の殿と樣の書き方が昔は非常にやかましく、七通りも八通りもあったが、つまり上輩ほど楷書に近く書き、下輩ほど草書にし、最も卑(ひく)いところへは假名で書くのである。(章末に委しく延べる)こんな煩瑣(はんさ)な事は今日では行はれぬが、目上に対する時楷書に近く念入(ねんいり)に書くことだけは心得ておかねばならぬ。
(ページ作成者注: 現在でも年輩の方の中には、下が「永」の「樣」を「永様」、「水」の「様」を「水様」と呼んで使い分ける人がいる。)