ココペリと河童



  2006年
の5月連休中に、アメリカのアリゾナに仕 事で行ってきました。現在勤務している会社のアメリカの子会社がアリゾナにあるからです。
  土日をはさんだので、日曜日に、現地社員の案内で、フェニックスから北へ150Kmほど行っ たところにあるセドナ(Sedona)という場所に連れて行ってもらいました。写真のような岩山があって、元々はインディアンの聖地だということでした。 (最近はUFOの産地?としても有名みたいです。)

  一体は観光スポットになっており、多くのホテルや土産物店がありました。そんな中で下の右の写真のよ うなキャラクターを多く目にしました。(写真は現地で購入したものではなく、日本のインディアンジェリーショップの「ココペリ」より購入したコースターで す。)

  第一印象は、「河童?」でした。現地社員に聞いたら、インディアンのホピ族の守護精霊のようなものだ ということでした。元々はロックアートと言って、岩の上や洞窟の壁に、4世紀から16世紀の長い間に渡って描き続けてこられたものだということでした。口 にくわえているのは、フルートで、これを吹くと雨が降ったり、種が飛び出して来たりと、豊穣と水に関係する精霊のようでした。

  帰国して、色々調べてみたら、芥川龍之介の描くところの「河童」の絵が、ココペリに非常に似ているこ とに気がつきました。左の写真がそうです。ココペリと河童ではいくつかの共通点があります。

(1) 発音の類似。KokopelliとKappaでK音とP音が共通。
(2) 芥川の絵でよくわかりますが、ココペリの頭部の飾り?と河童の「皿」の類似。
(3) ココペリは背中にコブがあります。(下の写真でははっきりしませんが)河童はご承知の通り、背中に甲羅があります。
(3) どちらも水と豊穣に関係します。
(4) 河童はあまり笛を吹くとは考えられていませんが、芥川の小説の「河童」
にはそういう河童も登場して います。


  河童の起源というのは、中国の河伯、カワウソなどの見間違い、座敷童等々さまざまで、民俗学では一大テーマとなっているようです。日本では、16世紀 頃、つまり江戸時代に近くなってから突然のように全国各地の文献や昔話に登場するそうです。また、カッパ、ガタロウ、カワタロウ、ミヅチなど様々な方言が ありますが、そんな中で「カッパ」は元は東北と関東での方言だということです。今のところ裏付けとなるものはありませんが、インディアンの空想上のキャラ クターが、何らかのルートで日本に伝わったということはないのでしょうか。ご承知の通り、インディアンは、氷河期にアジア大陸から凍り付いていたベーリン グ海峡を渡って北米に移住したアジア民族の子孫です。また、考古学者の山内清男が提唱した「サケ・マス文化圏」という考え方があり、日本の東北、北海道、 シベリア、北米において共通する文化要素を指摘しています。

  世界の、河童に類した水神と馬の関係については、石田英一郎の有名な論文の「河童駒引考」(1947 年)があります。その中で石田は、ユーラシア大陸全般に、水神と馬に関する民話、伝説が広がっていることを紹介しています。石田論文の参考文献を見る限 り、北米の神話なども研究したようですが、残念ながらココペリに関する言及はありませんでした。

  今のところ、この程度の考察なのですが、これまでのところ、ココペリと河童の関連を論じたものはない ようでしたので、敢えてここで紹介させていただいた次第です。

(2006年5月19日)

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