SARS禍の香港を行く


 2003年4月30日から5月3日の間、香港とマカオを旅してきました。ご承知の通り、2003年4月時点で、香港については、WHOよりSARS(急性重症肺炎)を理由とする渡航延期勧告が出ています。当然のことながら、ツアーはすべて一時中止になっていました。しかしながら、個人での旅行は各自で判断して自分の責任で行うことは禁止されていません。渡航前に以下のようなことを色々調べて、旅行中にSARSに感染する確率は非常に低いと判断して断行しました。
  • 渡航時点(2003年4月末時点)での、香港での感染者累計は約1500人。これに対し、香港の総人口は680万人。感染率は、0.022%に過ぎない。
  • 原因は、コロナウィルスの新種であることが特定されていた。また、空気感染の可能性も否定されていた。(現在では、患者からの飛沫感染、および患者から出た排泄物に潜むウィルスが下水等を通じて広まる、という感染ルートがほぼ判明している。)
  • 香港に長年駐在している前の会社の同僚から、香港在住の日本人の発症者は0という情報を得ていた。
  • この騒ぎのおかげで、香港の各所の衛生状態は、むしろ消毒が徹底されて改善されている筈。
  • 泊まるところも一流ホテル(5つ星クラス)なので、そちらも衛生面は問題ない筈。
 香港や中国本土、台湾などが騒がれている一方で、じゃあ日本はどうなのかと事前に調べたところ、
  • 日本では、年間100人に1人のレベルで肺炎にかかる(感染率1%)
  • 肺炎で死亡する人(厚生労働省の統計を参照)も、年間7万人〜8万人であり、ガン、心臓疾患、脳疾患に続いて日本人の死因の第4位。交通事故による死者よりも多く、致死率も7〜8%に達している。
  • 肺炎を引き起こす原因になる細菌・ウィルスは、肺炎球菌、インフルエンザ菌、マイコプラズマ、グラム陽性菌などSARSのコロナウィルス以外にも、きわめて多種多様。しかも日本での肺炎による死者のうち、半数はどの菌によるものか原因不明。(肺炎についての基礎知識はこのサイトを参照。)治療法も対症療法が中心で、確立しているとは言い難い。
という状況でした。実際に日本に帰ってきてからは、トイレに石鹸がないどころか、手洗いさえない店がたくさん目に付くなど、むしろ日本での感染症対策の不十分さが目に付きます。(日本でSARS患者が出ていないのは、「運がよかった」だけだと、当事者が認めています。)

 以上のような情報から、香港を旅行することが、日本にいることに比べて特別に危険であることはない、と最終判断し、旅行を断行しました。もちろん、自分自身がSARSになんかかかりたくない(持病として喘息・糖尿病があり、SARSになると致死率は非常に高くなりかねない)し、日本にSARSを持ち帰って回りの人に迷惑をかけることも避けたいので、マスク、消毒用ウェットティッシュ、口腔洗浄液(リステリン)といった衛生グッズを持参しましたし、また渡航中も手洗い・うがいを励行し、マスクを着用するなど、気を付けました。結果、旅行中は体調ほぼ完璧であり、帰国後も念のため毎日体温を測っていますが、現在のところずっと平熱で咳等の症状も出ていません。

 前置きが長くなりましたが、以下写真を公開します。現在、マスコミによるSARS報道には、事実に相違したり、誇張したりしたものが非常に多く目に付きます。このページの情報が、冷静な議論と感染対策のための材料となることを期待しています。
(以下の写真は、クリックするとより大きなサイズで見ることができます。)


関空待ち合わせゲート 関空→香港のJL/CX便の待ち合わせゲート。ボーディングタイムでもこの通りの状況。
機内 JAL/キャセイの機内。30-40人くらいの搭乗者でがらがらですが、フライトアテンダントはマスクを着用、食事のサービスの時は、さらにポリエチレンの手袋も着用していました。
CAMERON ROADにて 現地の様子。これはチムサアチョイのCAMERON ROAD。ご覧のようにマスク着用は6名/14名の少数派。
薬局1 薬局にあふれるSARS予防グッズ。
薬局2 同じく予防グッズ。
フェリー 九龍からマカオに向かうフェリー。マカオは現在まで発症者0で、香港から渡航する人は多く、結構多くの人が乗っていました。
マカオのSARS注意書類 マカオ入国時に配布されるSARSへの注意を促す書類。香港に出入りする時には、係員に耳穴で体温測定されます。
マカオの街角 ポルトガルのリスボンをしのばせるマカオの町並み。香港と違って、マスクしている人は誰もいない。
痰を吐かないように 路上に痰や唾を吐くのはやめましょう、ポスター。香港はこの悪習で有名でしたが、SARS対策としては確かに大問題です。
地下鉄 香港の地下鉄チムサアチョイ駅の様子。北京と違って、利用者はかなり戻ってきていました。
SARS便乗広告 SARS便乗広告。このあたりがたくましい香港商人という感じです。
商務中心 銅羅湾にある書店。この店で買った書籍は、ホルマリン臭く、どうやら消毒されていたようです。
そごう 日本の「そごう」です。漢字で「崇光」。お客はそれなりに戻ってきているようでした。
薬局3 薬局でマスクを求める地元の人。日本製のマスクは、上下を覆う幅が狭く、不評だとか。多くの人が青色の3層マスクを着用していました。
薬局4 同じくSARSグッズ。便乗商品もかなり出回っていたようです。
銅羅湾 銅羅湾の地下鉄駅入り口付近。繁華街だけあってチムサアチョイよりも多くの人がマスクしています。
薬局5 現地ではSARSは「非典型肺炎」と表現されています。
銅羅湾2 銅羅湾の街角の様子。
輸血 輸血を呼びかけるポスター。SARSでは、病院が一番危険だという認識が広まっており、輸血者が減っているようでした。
CAMERON ROAD2 チムサアチョイのMody Roadの様子。
キャンセル便 香港発の便がたくさんキャンセルになっていました。
香港空港 香港空港の帰りの関空行きの待ち合わせゲート。行きよりはましですが、やはりがらがら。
機内2 帰りの機内。やはりマスクを着用しているフライト・アテンダント。
書類 ピンクのは関空で配布されたSARSへの注意事項。関空では体温は自分で測って自己申告するだけ。


(2003年5月10日記入)


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